About JACPHR

JACPHRの概要

研究代表者より

先天性心疾患+肺高血圧症:様々な病態と臨床経過

研究の背景

先天性心疾患は心臓発生の段階で心臓に何らかの構造的異常が生じた疾患で、出生児の約1%に合併すると言われています。近年では手術成績の向上により成人期に達する先天性心疾患の症例は年間約1万人ずつ増加し、2008年時点で40万人以上となっていることが報告されています。先天性心疾患において、肺高血圧症は予後を左右する重要な合併症ですが、それにとどまらず肺高血圧症の合併は生活の質、妊娠・出産、罹病など生涯を通じて大きな影響を及ぼします。一方で、先天性心疾患は非常に多彩な病態や経過をとるため、肺高血圧症を合併した先天性心疾患(CHD-PH)においてもその臨床像は非常に多彩です。CHD-PHの実態解明を目指し、諸外国においては既にCHD-PHを含めたレジストリが構築され、症例の集積ならびに解析が報告されていますが、現状では予後に結びつくような結果が得られているとは言えません。日本においてはCHD-PHの治療方法やその評価は各施設ごとに行われており、その診療実態や予後が十分に検討されていないのが現状です。

研究の概要

JACPHRは先天性心疾患を伴う肺高血圧症のレジストリで、多施設での症例登録研究が2021年度の難治性疾患実用化研究事業として、日本医療研究開発機構(AMED)に採択されました。先天性心疾患を伴う肺高血圧症には1群の肺動脈性肺高血圧症だけでなく、2群の左心系心疾患や5群の複雑先天性心疾患に伴うものも含まれ、さらに肺疾患や染色体異常など併存症により修飾され多彩な病像を呈します。そのため病態の把握と治療方針決定には、本レジストリ研究によるエビデンスの創出が不可欠です。

研究の目的

本研究の主目的は、先天性心疾患を伴う肺高血圧症と類縁病態患者のリアルワールドデータを集積し、臨床的な予後予測因子、手術適応や治療効果を明らかにすることです。最終的に新たなエビデンスを創出し、先天性心疾患を伴う肺高血圧症の標準治療の確立を目指すことです。

期待される成果・将来展望

先天性心疾患を伴う肺高血圧症には1群の肺動脈性肺高血圧症だけでなく、2群の左心系心疾患や5群の複雑先天性心疾患に伴うものも含まれ、さらに肺疾患や染色体異常など併存症により修飾され多彩な病像を呈します。多彩な臨床像をとるCHD-PHの診療においては、個々の施設の症例検討でできることには限りがあるため、病態の把握と治療方針決定には本レジストリ研究によるエビデンスの創出が不可欠と考えています。JACPHRでは症例の集積により、CHD-PH診療における日本独自の知見を見出し、得られた結果をガイドラインへ反映し臨床現場に還元します。最終的には、CHD-PHにおける標準治療を確立し、新生児から成人まで年齢を超えたシームレスな医療の提供につながることを目指しています。

CHD-PHレジストリの流れ

ご協力の依頼

先天性心疾患を伴う肺高血圧症の治療アルゴリズムは未だ確立しておらず、短絡を伴う重症肺高血圧症の短絡閉鎖適応、そして肺高血圧標的治療薬の使用方法、さらにフォンタン循環など複雑先天性心疾患に対する肺高血圧標的治療薬の適応など、世界的に解明されていないことが多いです。小児〜成人、そして北海道〜九州に至るAll Japanの多施設で、JACPHR登録研究を加速させることで、全世界に向けエビデンスを創出し発信していきたいので、皆様の御協力を宜しくお願いいたします。

研究代表者:東京医科歯科大学客員教授
土井 庄三郎